なにかのまねごと

A Journey Through Imitation and Expression

カナスピカげっつあんどよんだ。

 というわけで感想。一応ネタバレなしのつもりというかまだ感想がまとまりきっていないのだけれど。


 結論から言うと凄く面白かった。面白いだけではなく、とても素敵な話だった。個人的には星の王子様並みの名作認定。(追記:一晩頭冷やして、さすがにこれは言い過ぎたと思った。でも、テーマ的に星の王子様の良きフォロワーになっていると思う。)私にまだまだ足りない、私がまだ必要としている言葉がたくさん拾えた。秋田禎信氏に、心からの感謝を。


以下はちょっとネタバレ気味かも。いや、そんなことも無いか?


 今作は秋田節に変化があったように思う。なんと言うか、いつもよりも文体が柔らかい気がするのだ。誰も血まみれになってたたずんだりしないからかもしれないけれど、秋田特有の文体によるわかり難さというのがだいぶ軽減されていたように思う。その傾向は、シャンクの頃から見られていたものではあるけれど、よりいっそう顕在化したというか。秋田の長所であり短所でもあった遠回しな心情描写がだいぶ緩和されて、分かり易く読み易くなっている。
 とはいえ秋田作品ならではの言語センスは、カナスピカという名前にも作中に出てくる不思議言語にもちゃんと発揮されているのでそこら辺は一安心。また、登場人物の心情描写に関しても、肝心なところはしっかりぼかしてあるというか、ちゃんと読み手の想像に任せてくれるようになっているのも嬉しい。
 もしかしたら、この一作をきっかけに秋田は相当化けるかもしれない。それが楽しみでもあり、怖くもある。