なにかのまねごと

A Journey Through Imitation and Expression

海鶴

 やる夫で学ぶ戦国の女性武将を読んで触発されたんで、一昨年のマンガナツ100にも選んだ漫画、『海鶴』を紹介しようと思う。


 この漫画の作者は『墨攻』などでよく知られる歴史漫画の大家(ビッグを読んで育った私にとってはそんな認識です。サンデーでゴルフマンガ描いてたとか信じられません)森秀樹だ。その森秀樹がやる夫で学ぶ戦国の女性武将でも紹介されている三島水軍の鶴姫を題材にし描いた歴史ロマンマンガ、それが『海鶴』だ。
 このマンガの鶴姫はスレで紹介されていた巫女さんでお姫様、なんていう可愛いキャラクターではない。いや、可愛い事は可愛いのだがそのベクトルが180度違う。このマンガの鶴姫はおてんばで超型破りな女の子なのだ。連載第一回を巻頭カラーで飾ったこのマンガのカラーページに極彩色が彩られていたのを良く覚えている。その極彩色がこのマンガの鶴姫のキャラクターにぴったりなのだ。奇矯な服装に身をつつみ、誰からもうつけと呼ばれる奇行を繰り返すおてんば少女、それがこのマンガの鶴姫だ。
 そしてこのマンガの鶴姫を戦国の女武将などという表現で終わらせてしまうのは間違っている。戦国の時代、陸の男達が日本の覇権を争った時代は世界史で見るならば大航海時代であり、ヨーロッパの各列強が黄金の国ジパングを目指して我先にと競っている時代でもあったのだ。そしてそんな時代に海で育った鶴姫はただひとり外界の世界、日本国外に出る事を夢見ていた。しかしこの戦国の時代は鶴姫が住む瀬戸内海大三島にも戦火をもたらそうとしていた。周防の大内家が瀬戸内海の覇権を求めて三島水軍を攻めにきたのだ。自分の故郷の一大事とまだ見ぬ大世界への憧れの間で、鶴の心は大いに揺れる。そんな中サバエという倭寇の王との出会いが鶴の行く末を変える。最後に鶴が下した決断は…。
 ざっと紹介するとこんな感じの、たった三巻分でありながら非常にスケールの大きな話だ。この鶴姫のキャラクターは人によって好き嫌いが大きく別れると思う。私自身このマンガを何度か読み返したが、鶴の大きなキャラクターに魅了されながら読めることもあるが、そのわがままさや奇矯な行動に眉をしかめながら読んだこともある。一昨年のナツ100のために読み返した時は後者だった。しかしこの記事を書くにあたってあらためて読み直してみたら、やっぱり鶴に魅了されてしまった。この鶴のキャラクターに惚れられるかどうかがこのマンガを楽しむための鍵だ。もし惚れられたのならば、保証しよう。このマンガはとてつもなく面白い。
 とりあえずYahoo!コミック 海鶴 森秀樹で無料立ち読みが出来るようだ。気になった方はぜひ読んでみて欲しい。