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本気のベンチャー

 私が敬愛してやまない秋田禎信氏の作品に、『誰しもそうだけど、俺たちは就職しないとならない』という、就職をテーマにしたナンセンスギャグ小説があります。主人公の『俺』と田代の二人が大学4年の夏になり、就職を考えるためあれこれ語り合ったり行動したりする、という感じの内容なのですが、中身がかなりぶっ飛んでます。そのぶっ飛び具合の解説は以下のページを読んでいただければ分かりやすいかと。
http://www.business-i.jp/news/book-page/debut/200804190005o.nwc より引用します。

 2人は大学の就職指導室に行く。ところが、人間の職員は見当たらず、質問に正確に答えるというコンピューターが指導するという。しかも、役に立たない。2人は「職場というのは、なんの役に立たなくても、間違ったことを言わない奴が生き残るのだ」と納得する。このように物語は進んでいく。

 で、この小説の中に『本気のベンチャー』という話があります。私はこの話が一番好きです。
 この話はまず、ベンチャーの本質について二人が語り合っているところから始まります。ホリエモンを連想させる様なネタもありそれだけでもニヤニヤしてしまうのですが、曰く、ベンチャーの本質とは裏技であると。社会には必ず脆弱性があり、それを見つけることが本質で株云々は手段に過ぎない、と田代は語るのです。そして二人は究極の本質に至ったベンチャー企業を訊ねます。
 そこで待っていたのは、70年代安保闘争の化石の様な服装をした男性でした。この人は革命を仕事としているというのです。目的は全ての既得権益の解消であり、ベンチャー企業と言われればそれを否定する理由はないと。もうこの時点でベンチャー企業関係ない気がするのですが、とにかく彼は真面目に語ります。民主主義は一部のブルジョワジーが支配する大量消費社会と軍事力を維持するために存在しているに過ぎない、しかしそこに奴らブルジョワジーの弱点がある、と。
 彼が見つけた社会の脆弱性とそれをつく攻撃方法がオチなのですが、そのオチがまた脱力ものであり、最後の主人公二人の語り(何故か会話と書く気にはなれません)もまた清々しいほどの虚無感と言うか脱力感と言うか、あまりにも意味がないのです。でも、それが面白いのです。あれは、ある種究極のソーシャルハック兼ライフハックの様な気がします。
 気になった方、ぜひ一度読んでみて下さい。

誰しもそうだけど、俺たちは就職しないとならない

誰しもそうだけど、俺たちは就職しないとならない