なにかのまねごと

A Journey Through Imitation and Expression

著作隣接権の話

 漫画家、赤松健先生が著作隣接権について講談社に話を聞きに行った件の顛末が公開されていました。
http://kenakamatsu.tumblr.com/post/19395239269/rinsetsu

 この話で一番の問題は、『著作隣接権が自動的に発生するものである』という点に尽きます。
 もちろん出版社の仕事に金銭的価値がないわけがありません。ですので、そこはしっかりと書類を作ってマネジメント契約を交わせばいいのです。よほど配慮が必要な作家さんならともかく、そうでなければ契約書のテンプレートを作って出版社と著作者でサインをするか否かだけで何が足りないのでしょうか?

 赤松先生がここまで批判的な態度を表明するのは非常に珍しいと思います。先生の代表作の『魔法先生ネギま!』を読み続け作品内容とファンと先生のやり取りをネットで見てきた身として、赤松先生は知的な柔道の達人ではないかと感じています。批判に対して批判を返さず相手を下げることも言わず、どこまでも互いの妥協点を追求していく方です。その赤松先生がここまで辛辣な発言をするとは、この問題は随分と根が深いものなのかもしれません。

 また、この話を読んで小説家、秋田禎信氏の短篇集『誰しもそうだけど、俺たちは就職しないとならない』に収録されていた『出版社の条件』という話を思い出しました。
 この短編集は学生の就活を通して社会を斜めから眺めるコメディー小説です。『出版社の条件』は主人公たちが就活のため出版社の編集者に話を聞くという話しなのですが、オチが辛辣です。
 編集者は出版社は著作権によって利益を生み出していると熱っぽく語ります。こんな具合に。

「我々は紙とインクの加工品を製造販売することの権利によって利益を生み出しているのです。これらはすべて用意された道。神の恩恵により王に下された賜物です。恐らく……恐らくですが、私が思いますに、我々は天に祝福されています」

 で、最後に主人公が「でも著作権って、別に出版社とは関係ないですよね」と一言。そうすると編集者は慌ただしく席を立ってしまうのです。
 最初に読んだときはとにかく掛け合いが面白いとしか思ってませんでしたが、今読み直してみると、なんと皮肉なことか…と思わずにはいられません。