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中二病と全能感、そして黒歴史

 中二病とは、全能感がもたらす病である。
 中二病は、主に子供と大人の境界線である思春期に発病するため、この名がつけられた。この時期に患者の多くが生まれるのは決して偶然ではない。
 人は幼少期に『出来ない』を数多く経験する。例えば、階段が登れない、高いところの物が取れない、本が読めない、などである。これらは成長していくにつれて『出来るようになる』。つまり、幼い子供には成功体験が非常に数多く蓄積されている。この『出来るようになる』感覚が伸び悩むのが思春期なのだ。
 人は思春期を迎えると、再び『出来ない』感覚と出会う。勉強がわからない、スポーツができない、歌が上手く歌えない、など。幼少期の『出来ない』と違うのは、『なかなか出来るようにならない』点だ。自分で意識しなくても自然と出来るようになった幼少期に比べて、思春期の『出来ない』は努力しなければ出来るようにならないのである。
 自然に乗り越えられない『出来ない』があるのに、幼少期の成功体験がもたらす全能感は心に残っている。この現実と自己像の矛盾が引き起こすのが中二病だ。自分は全能だと思っている。けれども自分が万能ではない現実がある。そこで、非日常の世界でなら自分は全能なのだと夢想を始めてしまうのが中二病の原因だ。
 その夢想を後押ししてくるのが、数々の青少年向けエンターテイメントである。落ちこぼれが実は強かったという話、異世界に行ったら自分は特別な人間だったという話、実は自分は特殊な能力を持っていたという話。そうしたエンターテイメントに囲まれ、自分が全能であることを夢見続けているのだ。
 だが、やがて中二病患者たちは現実を受け止めていく。ゆっくりと、自分が全能であるのは空想物語の中だけだと理解する。むしろ自分の全能感を優しく折るために、全能である自分を物語の中に閉じ込めていく。その封印は、『出来ない』ことだらけの現実の中で生きようとするなら誰もが通らなければならない儀式なのだ。
 そして物語の中に閉じ込められた自分は、黒歴史と化す。けれどもそれは、中二病であった自分が自分と現実に折り合いをつけられたことの証明なのだ。だから、きっと誇っていい。そう思う。