なにかのまねごと

A Journey Through Imitation and Expression

愛しい香奈枝さんの装甲悪鬼村 感想 微ネタバレあり

 共産主義マジキチ。

 ってなんか変な感想が先に出ましたが、まず真っ先に思い浮かぶのはこれです。物語の舞台になっている寒村では共産思想のキッツい類のが根付いてしまっていてそれが問題になっているのです。って、あの寒村の問題を共産思想の問題だと思ったのは私の感想なので秋田先生自身はそんな事は全く思ってないかもしれないですが。

 で、その寒村では子供も村の財産として共有するために女性もまた共有されているという結構エグイことになっているのですが、そんな中個人の愛を自覚してしまった青年と少女がかなり切ないことになっていて、グッと来るものがありました。そのあたりに18禁的なエロースなシーンが入っているのですが、エロゲに限らず今まで接した物語のエロースなシーンを思い浮かべて比べてみても、なんていうか胸キュン度というか切ない度というか精神的満足度というかそんなモノが相当高いです。
 秋田先生はLOVEが書けないんじゃなくて書かなかっただけなんだYO!と世界の中心で叫びたいです。

 けれどもこの物語の主人公は香奈枝さん。色々とすごい人な香奈枝さんが関わる以上どうあってもタダではすみません。香奈枝さんの代理人たる我々に突きつけられるたった一度の選択の機会、2つの選択肢のどちらを選ぶかで30分くらい迷いました。まあ迷ってもその場でセーブできるからいつでもやり直せるしどうせ最終的にはどちらのルートもプレイするんだから、と思っても、考えさせられました。
 ノベルゲームの醍醐味というのは自分の選択で未来が決まっていくことにあるのだろうと思っていますが、その選択にどれほどの重みを感じるか、というのは結構重要だと思います。その意味で、この短いノベルゲームは面白い。
 秋田先生、一度30時間くらいかかるノベルゲームを作ってください。

 しかし秋田先生の描く香奈枝さんは優しいなぁ、と思いました。本編の香奈枝さんも優しいって言っちゃ優しいのですが、なんというか貴族的な優しさなんですよね。本編中でもノブレス・オブリージュと表現されてますし。けれども秋田先生の描く香奈枝さんは子供と目線を合わせることも出来る優しさを持っている。思わず「香奈枝さんが優しいー!!」と叫んでしまいました。香奈枝さん、ごめんなさい。

 とにかく、読んでみて良かったです。どちらの選択肢の先にも救いなんかなかったけど、希望に満ちた物語だけでなく、狂気が支配する物語にもきっと存在する意味があるんだろうなぁ、と思いました。