正しくあることを捨てる

正しい世界で生きていけるひと、それは少なくとも私ではないのだろうと思う。

私は正しくあることを捨てた人間だからだ。

正しくあることを捨てたというのは、なにも積極的に間違いを選ぶという話ではない。自分が間違えることをあらかじめ許している、それだけの話。

前にも書いた気がするが、昔は絶対に正しいことに興味があった。何故なら、絶対に正しいことに逆らわなければ自分は常に正しい、そう考えていたし、自分が正しければ何かあっても悪いのは自分以外の誰かだから、絶対に正しいことを手に入れたらきっととても楽になれる、そう思っていた。

けれども、自分さえ正しければいい世界には他の人が居られないことがわかった。むしろ自分の居場所すらなかった。

何か行動をとる毎にその正しさを検証する生き方はとてもとても辛かった。常に自分で自分を裁判にかけているようなものだったから。

だから私は正しくあることを捨てた。間違える自分をあらかじめ許すことにした。間違えたとしてもなお自分は人間であることを信じた。

そうして、ようやく生きるのが随分と楽になったのだ。